腫瘍とは本来の細胞分裂をせずに無秩序に増殖していった結果発生したもので、正常の組織の機能を障害することで様々な病害を起こします。
良性なものもあれば悪性のものもあり、種類や発生場所によって治療法や予後が大きく異なります。
・腫瘍は良性と悪性に分けられ、良性のものは「〜腫」、悪性のものは「がん」や「肉腫」と呼ばれます。
・悪性腫瘍は浸潤(周囲の組織を破壊しながら拡大すること)や転移((他の臓器へ移動すること)を起こしますが、良性腫瘍は基本的にはありません。
・悪性腫瘍の根治には積極的な治療で戦っていく必要があり、腫瘍の種類によっては治療が困難(なこともあります。また、一旦治癒しても再発(する場合もあります。
・良性腫瘍でも、増大により筋肉の機能障害や他の臓器を圧迫するなどの弊害を起こす場合は手術による介入を行うことがあります。
腫瘍は構成する細胞の種類により3つのタイプに分けられます。
皮膚や腺組織を構成する細胞の腫瘍です。
例:皮脂腺腫、乳腺腫、扁平上皮癌、肝細胞癌
結合組織、脂肪組織、筋組織など上皮以外の細胞で構成される腫瘍です。
例:脂肪腫、血管肉腫、骨肉腫
それぞれが自ら独立して機能できる細胞で構成された腫瘍です。
例:肥満細胞腫、リンパ腫、組織球系腫瘍
状況や疑われる疾患に応じて、組み合わせて行っていきます。
細い針を腫瘍組織に刺入し、場合によっては吸引をかけて針内に組織を採取します。
回収した組織片をスライドガラスにて標本を作成し、顕微鏡で観察します。
トゥルーカットと呼ばれる組織採取用の針がついた器具を腫瘍組織に刺入し、針生検よりも多くの組織を採取することができます。
トレパンと呼ばれる丸い刃がついた器具で腫瘍組織の一部をくり抜くように採取し、病理組織検査へ提出します。
採取する組織が多い分、確定診断が得られやすいですが侵襲性も高いため局所麻酔〜全身麻酔を必要とします。
腫瘍組織を完全に切除すると共に、その組織を病理組織検査へ提出して確定診断を行います。
手術による切除が唯一の治療法である場合に行われる治療と検査を兼ねた方法です。
局所麻酔〜全身麻酔を必要とします。
臓器の位置関係を描出でき、身体の各部分における腫瘍性病変の検出に有用です。
基本的に全身麻酔は必要としません。
レントゲン検査では見ることのできない臓器の内部構造を描出することができます。
腫瘍の内部構造や臓器内の発生部位の特定に有用です。
基本的に全身麻酔は必要としません。
X線を身体の周囲から照射して断層の画像を何百枚と作成し、立体的な評価が可能となります。腫瘍の位置や範囲の特定に有用です。
動物では全身麻酔が必要なことが多いです。
実施する場合は検査が可能な施設へご紹介いたします。
磁場を発生させ水素原子から出る電気信号を画像化したもので、CTと同様に断層での画像を作成できますが、特に脳神経系における病変の特定に有用です。
動物では全身麻酔が必要なことが多いです。
実施する場合は検査が可能な施設へご紹介いたします。
血液中の「マイクロRNA」という物質を測定することで、腫瘍細胞の存在を知ることができる腫瘍性疾患の新しい検査法です。
採血のみで行うことができるため従来の検査法と比べると体への負担が少なく、腫瘍の早期診断の指標として注目されてきています。
現在ではわんちゃんの
・リンパ腫
・肥満細胞腫
・肝細胞癌
・口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)
・移行上皮癌
の5種類の癌腫に対して検査を行うことが可能で、将来的には検査可能な種類も増えていく予定です。
この検査が可能な施設は限られており「Liquid Biopsy がん検査指定病院」にて行うことができます。
当院は指定病院となっておりますので、ご希望があればいつでもお尋ねください。
検査を運用する株式会社メディカルアークのホームページ
https://medical-ark.com/
腫瘍組織を手術により切除する方法です。他の方法の有効性が低く、切除により治癒するタイプの腫瘍に適応となります。
切除した腫瘍を病理組織検査へ提出して確定診断を得るために行われることもあります。
腫瘍組織に放射線を照射することにより腫瘍細胞を死滅させることで治療します。
複数回に渡って治療することが多く、全身麻酔を必要としますが標的となる腫瘍に対してピンポイントに治療を行えるのが利点です。
特殊な施設を必要とするためご希望の場合はご紹介いたします。
いわゆる「抗がん剤」による治療を指します。抗がん剤は腫瘍によっては感受性が異なり、腫瘍組織も正常組織も標的にするため副作用を起こすこともあります。
血液系の腫瘍(リンパ腫)や、転移性のある腫瘍に対して適応となります。
また、特定の腫瘍組織のみを攻撃する「分子標的薬」による治療もあり、場合によって使い分けられます。
腫瘍に対する第4の治療と言われており、自分自身の血液を採取して培養し、血液内のリンパ球を増殖させて腫瘍細胞を攻撃させるという治療法です。
自身の細胞を用いるため副作用が少ないのが最大の利点ですが、特殊な施設を必要とするためご希望の場合はご紹介いたします。
腫瘍は未だ治療法が確立されていないものも多く、平均寿命の増加により近年その発生率も上昇してきています。
良性腫瘍か悪性腫瘍かで予後は大きく異なりますし、種類によっては治療により治癒〜寛解が望めるものもあるため、腫瘍が疑われる場合は発生場所や大きさ、年齢などの情報と併せての見極めが重要となります。
必ずしも積極的な検査や治療が最善とは限らず、その子に合わせたプランを立てていくのが腫瘍性疾患との正しい向き合い方だと思います。
不安な点もあると思いますが、何でもお答えいたしますので一緒に最適なプランを決めていきましょう。