呼吸器科

このような症状はありませんか?

・咳をする
・いびきが多い
・くしゃみ・鼻水をしている
・ゼエゼエしている
・呼吸が速く、苦しそう

呼吸器官の役割

鼻から吸引された吸気は鼻腔→咽喉頭→気管→気管支→肺の順に輸送され、その末端である肺胞にてガス交換(空気中の酸素と血液中の二酸化炭素の交換)を行い、逆の経路を辿って呼気が排出されます。

主な疾患

鼻炎

鼻腔内の粘膜の炎症により鼻水・くしゃみの症状を起こし、進行すると鼻詰まりのような状態になることもあります。
細菌・真菌(カビ)・ウイルスの感染症やアレルギーの他に歯周炎から生じるケースもあります。
炎症が副鼻腔や前頭洞まで波及すると副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)になり、慢性的に鼻水を繰り返すようになります。

鼻腔内異物

鼻腔内への異物の侵入により慢性的に鼻水・くしゃみの症状を起こします。
草や植物の種子、食物の一部などが多く、これらは画像検査では検出されにくいため確定診断には内視鏡検査が必要となります。

鼻腔内腫瘍

鼻腔粘膜から生じた腫瘍が鼻腔内を占拠し、慢性的な鼻水・くしゃみ、時には鼻出血の症状が見られるようになります。
腫瘍が周囲組織を破壊しながら浸潤すると頭部の変形眼球突出など外貌にも変化が出てきます。
多くは悪性腫瘍であり、鼻腔腺癌・扁平上皮癌・リンパ腫などが挙げられます。
確定診断には鼻腔内のCT検査、内視鏡検査および鼻腔内病変の組織生検検査が必要となります。

犬伝染性喉頭気管炎(ケンネルコフ)

ウイルスや細菌による呼吸器感染症で、犬同士で伝播します。
が主症状で、悪化すると鼻水・くしゃみの他に食欲不振などの全身性の症状を起こします。
免疫の弱い子犬で罹患することが多く、合併症がなければ自然治癒することも多いですが症状が持続する場合は抗菌薬や鎮咳薬、吸入療法などで治療を行います。

気管虚脱

気管を構成する軟骨が弱いことで気管が横につぶれ、空気の通りに影響が生じます。咳の症状から始まり、やがて「ガーガー」という呼吸音をするようになります。
原因は遺伝性、栄養性など様々で不明なことも多いですが、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリア、トイプードルなどの小型犬種にて好発すると言われています。
レントゲン検査における気管の扁平化の確認、または内視鏡検査にて診断します。
進行度(グレード)がⅠ〜Ⅳの4段階あり、グレードが進むほど内科治療に反応しなくなり、場合によっては気管内へのステント挿入などによる外科手術が必要となります。

誤嚥性肺炎

食物や分泌物が誤嚥により気道内に侵入し、急性に肺障害を起こします。嘔吐・喉頭麻痺・巨大食道症・全身麻酔・神経疾患などを背景として発症し、嚥下反射が弱くなる夜の就寝時に多いと言われています。
咳や努力呼吸といった症状が見られるようになり、呼吸困難によるチアノーゼになることもあるため早期の対処が重要となります。

短頭種気道症候群

短頭種(フレンチブルドッグ、パグ、ボストンテリア、ペキニーズなど)における気道の解剖学的問題(外鼻孔狭窄、軟口蓋過長、気管形成不全など)により、異常呼吸音(ガーガー)やいびき、頻呼吸、睡眠時呼吸障害などが起こります。
気道が狭くなりやすく、呼吸による放熱がうまくできなくなるため熱中症呼吸困難のリスクとなります。気温が上昇する夏場では特に要注意です。
予防的な手術(鼻翼切除術、軟口蓋切除術)を施すこともあります。

猫の喘息

特定の抗原の吸引によるアレルギー反応を原因とする発作性の咳や異常呼吸の総称で、2ヶ月以上症状が継続していることが診断基準の一つとなります。

猫の鼻咽頭ポリープ

耳管や中耳に発生する非腫瘍性の腫瘤で、鼻咽頭に向かって拡大し、鼻詰まり・異常呼吸音・嚥下障害・いびきといった症状を起こすようになります。
また、外耳道の方へ拡大すると、耳炎により再発性の耳垂れを起こします。
先天性異常と考えられており、若齢の子での発生が多いです。
CT・MRI検査、内視鏡検査などによるポリープの検出により診断し、切除により治癒します。

肺の腫瘍

肺に原発性に生じる腫瘍もありますが、多くは他の部位の悪性腫瘍が転移したものです。
限局性の場合は症状はあまり出ませんが、肺全体に及ぶと咳や食欲・元気の低下、呼吸困難などの症状が見られるようになります。

呼吸器科における検査

状況や疑われる疾患に応じて、組み合わせて行っていきます。

身体検査

聴診・視診・打診などの身体検査にて呼吸の様式・音、粘膜色などをチェックします。
咳症状に対しては気道部分を触診して咳が誘発されるかを調べる「コフテスト」を実施します。

レントゲン検査

鼻腔-咽喉頭-気管-気管支-肺の領域を肉眼的に確認可能です。
気管虚脱や気管支・肺疾患などの診断に有用です。
鼻腔内は頭蓋骨に覆われていますが、撮影方向によっては病変を検出できることがあります。

培養検査・薬剤感受性検査

感染性の鼻炎を疑う場合に鼻汁などの検体内の微生物を調べ、検出された菌に対して抗菌薬感受性を調べます。

血液検査

肺炎のような炎症性疾患の場合に白血球数やC反応性蛋白(CRP)が上昇することがあります。

内視鏡検査

鼻腔内や気管内の病変の肉眼的な検査が可能ですが、全身麻酔が必要となります。
内視鏡スコープを通じて病変部の組織採取や異物の摘出、気管支内の洗浄なども実施可能です。実施する場合は検査可能な施設へご紹介いたします。

CT検査

レントゲンでは検出できない呼吸器の隅々までの精査が可能となりますが、全身麻酔が必要となります。
特に頭部(鼻腔、副鼻腔、鼓室胞など)の検査において非常に有用です。実施する場合は検査可能な施設へご紹介いたします。

中林院長から飼い主様へ

呼吸器は循環器同様、進行により急激な呼吸障害を起こして命を脅かす恐れがある部位で、状態を把握して適切な対処が要求されます。
咳やくしゃみといった初期に見られる症状でも頻度が多くなるようなことがあれば早めにご相談ください。
専門的な検査が必要となる場合は、検査機器のある施設へのご紹介も可能です。

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